平成6年2月23日 朝日新聞
寄席の三味線方11年、度胸で咲いた「花」
上方落語には出囃子だけだなく、噺の中にも、ふんだんに三味線や太鼓の効果音がはめこまれる。だが、演者と違って表には出てこない。
そんな寄席の三味線方で十一年余。このほど、若手芸能家らに贈られる大阪市の今年度咲くやこの花賞」に輝いた。
裏方の働きが認められたのだから、よけいにうれしかった。三味線弾きの目標になれました」中学生のころから寄席に通う。
高三で女性講談師、二十に歳で女性放談を志し、三味線の師匠のもとへ。週二回のけいこを六ヶ月ほどやり、落語会で押し掛け練習。
「ほんのお手伝いのつもり」が出発点だ。
「落語の中で、はめものでやる地唄などもレコードで勉強。落語をたくさん聞いているのが役に立っています」
今や春団治や文枝、染丸らの高座に欠かせない。
「度胸がよいので、少々間違うても臨機応変に合わせてくれる。後は唄に艶がでれば。年齢に応じていい声になりますよ」と染丸。まだ、三十三歳だ。
無形文化財の技を持つ故林家トミを目指せと「内海英華を無形文化財になるまで見守る会」も生まれた。
「結婚もしたいけど…。第一目標の賞はとれた」と、夢に向かって、まんざらではなさそうだ。